競うために集まる
トランポからバイクを降ろしてレースのエントリーを済ませ、レースウィークの拠点を整えているうち、見知った顔がひとつ、ふたつと集まりだす。日本の北から、南から、ここにバイクを走らせにやって来る。年齢も生き方も違う。共通するのはオートバイが何よりも好きということだけ。そんな不思議な共同体の一員になることも、モータースポーツに参加するよろこびのひとつだと思う。
トランポからバイクを降ろしてレースのエントリーを済ませ、レースウィークの拠点を整えているうち、見知った顔がひとつ、ふたつと集まりだす。日本の北から、南から、ここにバイクを走らせにやって来る。年齢も生き方も違う。共通するのはオートバイが何よりも好きということだけ。そんな不思議な共同体の一員になることも、モータースポーツに参加するよろこびのひとつだと思う。
レースの朝、朝モヤがゆっくりと解け、コースが徐々にライダーの熱気で満たされていく。その熱気はスタートの時最高潮になる。エンジンをかけると、リラックスしていた全身の神経が目を覚まし出す。ただ純粋に速さを競うライバルが隣にいて、挑戦しがいのあるコースがあり、そしてバイクというパートナーがいる。出発前夜、なかなか眠れなかったのは、このシチュエーションを想像したからだ。スタートを迎える興奮は、10代から何も変わっていない。
スタートしてコースを攻めている時、頭の中にあるのはライディングのことだけ。ただ楽しくて仕方がない。気づくと笑っていることさえある。ゴールラインを超えてバイクを停め、ヘルメットを脱いだ時の感情は、爽快感や歓び、心残りや悔しさ、バイクへの感謝、様々な感情がごちゃ混ぜだ。それらを一言で表すと、「楽しかった」になる。他の選手たちと別れ、高速に乗った時、頭の中はもう次のレースのことを考え始めている。